初ブログ。江戸川乱歩「人間椅子」
初めまして。神菜です。
読書好きが高じて読書ブログを始めてみました。
主に読んだ本の感想や覚え書き、日常についてなどを書いていこうと思っています。
記念すべき初更新ですが、今回書くのは再読した江戸川乱歩「人間椅子」について。
春陽堂の文庫本で、以下のタイトルが収録されています。
・人間椅子
・お勢登場
・毒草
・双生児
・夢遊病者の死
・灰神楽
・木馬は廻る
・指輪
・幽霊
・人でなしの恋
(セリアの猫マグカップかわいい。)
それぞれの短編がどんなものかネタバレ回避しつつまとめます。
・人間椅子
→椅子の中に住む男の独白。そこに座る女性にいつしか恋慕の情を抱くようになり……。
・お勢登場
→子供とかくれんぼをしているうち、誤って長持の中に閉じ込められてしまった夫。そこへ帰宅した不倫妻・お勢のとった行動とは。
・毒草
→「簡単に堕胎できる毒草がある」という話をしている主人公とその友達。背後で偶然それを聞いていたものがいて……。
・双生児
→双子の兄を殺してなり変わった弟。万事うまくいっていたものの、たったひとつの愚行でその犯罪があきらかに。
・夢遊病者の死
→夢遊病に悩まされている主人公は、ある日、自分の父が何者かによって殺されているところを発見する。状況証拠からみるに、どうやら自分が眠っているうちに殺してしまったらしいことに気がついて……。
・灰神楽
→はずみで殺人を犯してしまった主人公は、死んだ男の弟に罪をなすりつけようと画策するが……。
・木馬は廻る
→若い娘に夢中になっていく、冴えないラッパ吹きの中年男の話。
・指輪
→汽車の中で指輪の盗難事件が起きた。その犯人とありかについて、AとBの対話形式で進む。
・幽霊
→死んだ男の幽霊に悩まされる主人公。憔悴していく中で素人探偵の明智小五郎と出会い、そのからくりの謎が解かれる。
・人でなしの恋
→夜な夜な蔵にこもる夫に、浮気を疑う妻。しかし女が出入りしている形跡はない。そんな中、蔵で美しい一体の人形を見つけ……。
※以下ネタバレを含みます※
この短編集、本当に最高だなあと思うのですが、その理由の一つとして作品の並びがとてもいい。
「人間椅子」から始まって「人でなしの恋」で終わる。
どちらも屈折した恋心が主軸となっていて(人間椅子に関しては作中の虚構ですが)、それが情緒的で怪しくも美しいんです。
殺人、盗み、狼狽、嫉妬、裏切りなどの鬱々たる要素がふんだんに散りばめられた作品を読者に堪能させ、最後は純愛小説で終わる。(私はまごうことなき純愛小説であると信じている。)
なんて耽美……。
「人でなしの恋」のラストで夫が人形と心中するシーンなどは、あまりの美しさに感嘆のため息が漏れるほど。愛する人形を妻に殺された男の末路として、それは訪れるべくして訪れた瞬間だったのでしょう。
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そこには夫のと、人形のと、二つのむくろが折り重なって、板の間は血潮の海、二人のそばに家重代の名刀が、血を啜ってころがっているのでございます。人間と土くれとの情死、それが滑稽に見えるどころか、何とも知れぬ厳粛なものが、サーッと私の胸を引しめて、声も出ず涙も出ず、ただもう茫然と、そこに立ちつくす外はないのでございました。
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江戸川乱歩作品、やっぱりいいなあ。子供の頃からずっと、一番好きな小説家なんです。
コロナ禍で当面図書館が閉鎖されるそうなので、これを機に再読祭りをしていきたいと思っています!!