神菜の本棚

日常の裂け目。

山田かまち「山田かまちのノート上・下」

 

今日は天気が良かったのでお散歩をしながら、タイトルにある「山田かまちのノート」の下巻を読了しました。上巻は数日前に読了。春の陽気に、彼の書き遺した言葉の羅列はいっそうその輝きと鋭さを増し、私の心に迫って来ました。

 

f:id:venus00x:20210329213040j:image

 

水仙が綺麗だね。)

 

 

まず山田かまちという人物について簡単にご紹介。

 

 

山田 かまち(やまだ かまち、1960年昭和35年7月21日 - 1977年(昭和52年)8月10日)は、死後に遺作となった絵画が発見され、それらを収めた『悩みはイバラのようにふりそそぐ : 山田かまち詩画集』(1992年)がきっかけで世に広く知られるようになった人物。

wikipediaより引用】

 

 

私が彼の存在を知ったのは2012年のことです。

お笑い芸人・白鳥久美子さんの著書「処女芸人」の中に、山田かまちさんについて書かれた章がありました。

(ちなみに私は白鳥久美子さんが好きで、テレビを見たり、ブログをいつも楽しみに読んだりしています。この本が発売されたときも、発売日に書店で購入してすぐに読みました!)

 

以下、「処女芸人」から引用。

 

 

 

恋はするもんじゃない。落ちるものだ。

久美子は恋に落ちました。

中学校で身につけた処世術の一つ、「恋はしない」にのっとって生きてきましたが、そうだ、恋はするもんじゃない、いつの間にか落ちてしまうものだった。

 

久美子が恋に落ちた相手は「山田かまち」でした。

(引用/扶桑社/白鳥久美子/処女芸人)

 

 

久美子さんが好きになった山田かまちさんっていったいどんな人なんだろう。

そう思ってこの本を手に取りました。長らく積んでしまいましたが、今はただ「もっと早く読んでおけば良かった」という気持ちでいっぱいです。

 

詩、ピアノ、絵、ロック。山田かまちさんはあらゆる才能に恵まれた少年でした。彼は生前18冊のノートに自らの内面の葛藤を写し取っていて、この2冊の書籍は、それらを後にまとめたものです。

彼のはじけるような苦悩は瑞々しく、無邪気さはまるで透き通るようでした。屈折しているのに、彼の言葉は受け取る人間の心にまっすぐ届く。私は時間を忘れ夢中になって読みました。ページをめくる手がどんどん早くなっていき、いつの間にか自分がかまちさんの一部になって、その濃くて短い青春を垣間見たような気がしたほどです。

 

ページいっぱいに繰り返し描かれた好きな女の子の名前。夢に向かって邁進する力強い言葉。そうかと思えば、なにもかも諦めて投げ出してしまったような憂い、持て余した恋が愛に変わる尊い一瞬。誰もが共感してしまうような、それでいてかまちさん以外の誰も触れることができないような、繊細でアンバランスな世界が細かく切り取られて、そのノートの中に表現されていたのです。

 

私の好きな詩の一部を引用します。

 

 

枯葉が、 きょうも ソプラノの響きのように、宇宙へ飛んでゆく。

車庫の中から町が見え、コーヒーのような真っ青な空から星がひとつぬけ出る

きらめいて落ちて、消えてしまうような、色彩の輝きがこちらをみつめている。

(引用/76・11・14/山田かまち/山田かまちのノート)

 

* 

 

同じく若き日の白鳥久美子さんが恋に落ちてしまうのも納得。彼は少年でありながらすでに立派な芸術家だったのですね……。

関連書籍をもっと読もう、山田かまち美術館にも行こう。そう思いました。

 

山田かまちさんは十七歳のとき、エレキギターの練習中に起きた事故で、お亡くなりになりました。

 

彼が見た「コーヒーのような真っ青な空」がどんなふうだったのか、想像せずにはいられません。